「いのちを支えるエンジニア 臨床工学技士のお仕事」を知る授業
医療機器に関わるお仕事。おしっこを作る機器「血液透析」について学ぼう!

キャリア教育イベント

 

[はじめに]
このたび、公益社団法人 日本臨床工学技士会(日臨工)は、公益/広報活動の一環として、小学校が主催するキャリア教育イベントでの出張授業を提供致しました。授業を通じて、小学生に直接臨床工学技士を知ってもらう機会を創ることができました。

[キャリア教育イベントとは?]
文部科学省が2020年度より提示した「キャリアパスポート(キャリアノート)」。小・中・高を通じたキャリア教育として ”自らの学習状況やキャリア形成を見通したり、振り返ったりしながら、自身の変容や成長を自己評価できるよう工夫されたポートフォリオのこと” です。学年や年齢に応じて記録の形は具体的になっていき「やりたいこと、なりたいものを実現するためには、これから何をすべきか」のプロセスを考えられる設計になっています。

文部科学省は、地域や学校の特色などを踏まえつつ、子供たちの発達の段階にふさわしい「キャリア教育」を各学校で推進・充実させるよう推進しています。この方針を受けて、キャリア教育の一環として各学校では「キャリア教育イベント」など、企業による出張授業などの企画を行っています。ここでは、各企業の職業情報や社会との関わりなど伝えることで、働くこと、夢をもつことの大切さを教える機会になっています。実際に第一線で働く人から話を聞ける、リアルな職場体験の場にもなっています。医療をはじめ、普段触れることのないジャンルの企業から授業を受けることで、子どもたちの可能性を広げる機会にもなっていると考えられます。

 

[技士会としての参画目的]
労働人口減少が問題視されている情勢の中で今後は益々「人材の確保」への施策が重要になってきます。特に、青少年層へのアプローチを如何にして行い将来の担い手を増やすのか、憧れの職業にするのかが重要な懸案事項となります。まずは、一人でも多くの方へ「臨床工学技士」を知ってもらうことが重要だと考え、今回制作したPR資材が、今後も「臨床工学技士」の仕事を知ってもらうための一助となれば幸いと考えております。

 

[授業テーマ]
キャリア教育イベントに参加することで、小学生に直接臨床工学技士を知ってもらうための授業を行う機会をいただけました。授業内容は、以下の3つのコンテンツを用いて、アクティブラーニングの形で授業を構成しました。

  • 透析ってどんな治療?(実験/観察)
  • 日常に潜んでいる医療機器を探せ(グループワーク/クイズ)
  • 実際に働いている人に聞いてみよう(Q&A/インタビュー)

理科で習う内容を軸にしながら、医療の仕事を身近に感じてもらうための体験をメインにした60分の授業を行いました。

 

[授業を届けた小学校の紹介]

① 帝京大学小学校(東京都多摩市)
 2023年9月13日(水) 
 小学6年生25名を対象@理科室

 学校の理念
 自ら問題意識を持ち、考え、判断し、行動し、その結果に責任を持つ「自分流」を育てる。
 帝京大学グループの建学の精神に則り、「知・情・意・体」のバランスのとれた児童の育成を
 目指します。

② 港区立笄小学校(東京都港区)
 2023年10月17日(火)
 小学6年生36名を対象@図工室

 学校の理念
 人間尊重の精神を基調とし、健康で知性・感性・徳性に富み、広く国際社会に信頼と尊敬を得ら
 れる児童を育成する。品格ある歴史と伝統を踏まえ、国際人としてこれからの未来に生きる力を
 発揮する、たくましい児童の育成を目指す。

[どんな授業を届けたか?]
「医療機器に関わるお仕事。おしっこを作る機器「血液透析(けつえきとうせき)」について学ぼう!」

臨床工学技士の仕事にとどまらず、医療機器メーカー(株式会社日機装)を含めた、医療機器に関連したお仕事紹介の場としました。医療機器を使う人と医療機器を作る人のお仕事について、こちらから話を一方的にするだけでなく、子供たちが実際に体験を通じて考える機会を技士会として提供できる場にしました。

[授業内容は5つのパートに分かれたプログラム]

  1. 腎臓の働き (尿の生成)について
  2. 血液透析のしくみ「牛乳を濾過してみよう」
  3. 実際に治療で使われる機器を触ってみよう
  4. 医療機器クイズ 「ニセモノはどれだ?」
  5. 医療機器に関わる仕事: 実際に働いている人に質問してみよう

 

限られた時間のなかで臨床工学技士の仕事を知ってもらうために、今回は透析に関するお話しを軸にして授業を進めました。腎臓の機能のなかでも、『おしっこ』が体の中で作られる人体の仕組みから、なぜ医療機器が必要になるのか、病院ではどのよう治療が行われているのか、医療機器に関わる仕事とはどのようなものがあるのかといったストーリーで繋げていきました。

実際に医療現場で使われている道具を手に取って観察したり、牛乳を透析装置で濾過する実験をしてみたりしました。また家庭の中でも使われている医療機器を当てるというクイズを実施しました。クイズの答えを出すのに、グループ内でコンセンサスを取る必要があったため、子供たちの間で多くの対話が生まれていました。

[フィードバック]

【先生の感想】

【児童の感想(一部抜粋)】

 

  • 臨床工学技士さんの仕事は、大きなやりがいと責任を感じられる仕事だと思った。自分も人のために貢献できる、自分にしかできない仕事に就きたいです!
  • 臨床工学技士は人に寄り添えるのが凄いと思った。私も人の心に寄り添えるようになりたい。人との関わりを大切にしたい。そのためにも、いろんな人とコミュニケーションを取りたい。

【授業を観覧した保護者からのご感想】

  • 臨床工学技士について興味があり、子供のクラスではないが聴講した。
  • 臨床工学技士のお話を直接聞くことができてよかった。
  • 具体例があり、分かりやすかった。医療機器について興味をもった。

 

【授業をしてくれた人(スタッフ)の感想】

  • 児童の皆さんが目を輝かせながら、実験に取り組んでいる姿を見て、私自身も大変勉強になりました。
  • 会社内に居ただけでは体験できない良い経験になりました。自分の仕事が改めて何に繋がっているのか見つめ直す機会になりました。
  • 授業前に臨床工学技士を知っている児童は少なかったですが、いざ授業が始まると興味を持って積極的に質問を投げかけてくれ、真剣に話を聞いてくれたことが嬉しかったです。
  • 臨床工学技士は一般の方には知ってもらう機会の少ない職種かもしれませんが、特に将来を担う子供たちに私たちの仕事を知ってもらう意義を感じました。
  • 小学生には、少し難しい内容かと思いましたが、授業が始まる前までは、ソワソワしながらお友達と「これなんだろ?」、「これ知ってる〜」と話していましたが、授業が始まると真剣に先生の話しを聞きながら、ノートにメモする姿が見られました。実習する時には、「先生!これなんですか?」「どうして?どうして?」「針…太!」と言ったこどもらしい発言が飛び交っており、微笑ましく思っておりました。
  • いつも臨床現場にしかいない日常ですので、私自身もちょっとした体験にもなり、将来この児童達の中からCEが出てきてくれて、あの時授業受けていましたって言われたら嬉しいなぁと思いました。

 

[今後の展望]
今回の出前授業を通して、児童が医療機器に関わる仕事に興味を抱き、将来の職業を選択する際の一助になれば幸いと考えております。

将来子ども達には、社会的・職業的に自立し、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実践するための力が求められています。社会や職業にかかわる様々な現場を体験してもらい、働くことや夢を持つことの大切さを発見する場として活用いただけたら幸いと考えています。

日本臨床工学技士会として、今回の授業内容をコンテンツ化し、教材の提供ができるよう整備を進めております。各都道府県でも同様の活動をされていることと存じますので、お役立ていただけましたら幸いと考えております。

協力:株式会社 日機装

以上